妊婦と院長登場と息子の誕生(出産記その10)
陣痛がくるたびに、いきむ。
助産師さんからも、上手になってきたね、その調子、余裕があったら二回いきんでみよう、そう上手。と言われるようになる。
回数重ねると、ルーチンワークのようになって慣れてきて、うまくいきめなかったりすると私は助産師さんに謝ってた。
でも私の体力はかなり限界だった。視界が霞んでた。
でも、今病院にきたであろう切迫早産の人が大変なはず。
とか思って私は妙に頑張ってます感を出していきんでた。真面目ぶってた。
多分それは助産師さんに通じてたというか、私の弱りは明らかで、どうやら子は結局十分におりてこなかったっぽい。
助産師さんがケータイで院長らしき相手に「早くきてくれます?」って半ばイライラしてる感じで話ししていて、私はそれをてっきり切迫早産の人の対応の事だと思ってたけど、私の事だった。
「はい、おまたせー」
と、ひょうひょうと院長が来た。
診察のときに見る白衣姿の院長。
私の股の様子を見ながら、あー、なるほどね。と言って白衣を脱いで緑色の手術着みたいなのを助産師さんに着せられてた。
でも十分に着せてもらえてなくて肩の部分がはだけていた。
はだけてるなー、なおしたいなーと思ってた。
助産師さんが院長に状況を説明してたけど私には理解できなかった。
その間も陣痛はきて、いきむんだけど
「次の陣痛はいきまないでね、陣痛きそうになったら教えて」
と院長に言われる。
え?え?なんで?ってなってるうちに陣痛がくる
「あ、今きます!」
と、私が言うと
「深く息してねー」
と言われた。
久しぶりにいきめない陣痛に、深く息するってか、「フー」って声を出すしか出来ない私。
すると
バチン
と音、と感覚がした。
あ、会陰切開されたんだな、まじで陣痛痛すぎてそれどころじゃ無いんだ。
ハサミ状のモノを入れられて、ジョキンとやられた感覚。
それによって自分の股間がどうなってるのかなんて感覚は全然無くて、わかんなくて、会陰切開された後、なんか院長と助産師さんでやってるんだけどなんせ自分の腹がでかくて邪魔でなんも見えない。
夫は会陰切開すら何も起きてる事が分からなかったみたい。
「次の陣痛きそうになったら教えてねー」
と院長が言う。
あ、いきんでいいのかな?なんて質問する暇もなく陣痛がくる。
「あ!きました!(んーーー!)」
といきむ私に
助産師さんが
「あー!いきんじゃだめー!」
と体を抑えられる。
?!
ウィーーーーーーーーン
分娩室に響くモーター音
な、なに?!なんなのこのモーター音?!
ギャア
ギャア
オギャア
ギャア
「はい!おめでとうございます!男の子だねー!おめでとう!」
血まみれの息子が私の胸に置かれた。
「じゃあ次はお父さんねー」
と、血まみれの息子は夫に抱かれ
「赤ちゃんとお母さんは処置がありますからね!お父さんは外で待っててね!」
と息子を取り上げられて追い出された。
いきんで踏ん張ってスポーンと出てくるかと思ってたので、いまいち状況が掴めず、吸引分娩になったって事を理解したのは
めちゃくちゃとんがった息子の後頭部を見た時でした。