妊婦と本当の陣痛(出産記その7)
私は痛みに弱いのかな。
と思ったのは不妊治療を始めた頃にした卵管造影検査の時。
あまりの痛さに、うわぁーっ、と声が出た。
検査後暫く起き上がれなくて看護師さんに支えられてやっと起き上がれたくらい。
生理痛は年々和らいでいたが、重い方で一度気絶したり、何度か腰抜かしたりしてたからなんとなく自分は痛さに強いと思ってた。
その卵管造影検査の時、痛さに無意識に声が出たもんだからびっくりしたのと同時に痛いと卵管に異常があると思って愕然としたんだけど結果は異常無し。異常有りならどんだけ痛いんだとさらに愕然とした。
臨月ちょい前の頃に一足早く出産を終えた友人に会った時に陣痛の痛みについて話したことがあった。
「私は叫ぶタイプだった」
と友人は笑顔で話してた。
まじかー、叫んじゃうのかー穏やかな貴女が、あらあら、旦那さんもびっくりね。
閑話休題。
結論言えば私は「叫んで暴れるタイプ」でした。
促進剤を打たれてから、今までの陣痛は単なるお遊びみたいなもんだと確信するのに全然時間はかからなかった。
すぐ痛みが!しかも1分おきに!
鼻の穴に棍棒(鬼が持ってるトゲトゲしたやつ)とか大根とか言われるけど
とにかく私の場合
ケツの穴が痛い!!!!!
便意の痛みとかそんなんじゃない
ンコよりデカイものが出そう!!!!
とにかくケツの穴が痛い!!!
肛門か恥骨から自分の体がメリメリっと2つにわかれそうな感じ。(寄生獣みたいに)
今までの陣痛は深呼吸を繰り返すことで痛みを逃すことが出来たのだが全然無理!!
いつの間にか痛みのたびに声が出るようになり
それが
んーっ
あーっ
から
ん〝ーーーー!
あ〝ーーーーっっっ!
ぎゃーーーーっっ!
になる。
お腹につけた陣痛を測る機械も陣痛のたびにエラー音が鳴る。
私が陣痛のたびに叫んで暴れるから。
壁をドンドン叩いたし、夫の腕を爪立てて握ったりベッドに足をガンガン打ったりしてた。
その度に助産師さんが来て、
ヒーフーって呼吸して痛みを流しましょう。
声出しちゃダメ!
いきんじゃだめ!
お腹の赤ちゃんも頑張ってますよ!
って言う。
ちなみに夫はその間、私のそばにいて背中さすったりテニスボールを私の肛門に押したりしている。
夫にとってすごい時間だったと思う。
そばにいてくれてよかったと思うけど、知らない私をたくさん知ってしまったと思う。てか大半私も知らない自分だったけど。
何度かそんなん繰り返して、多分助産師さんの引き継ぎ交代があって様子を見に来る助産師さんがガラッと変わった。
さっきまで、私を励ましたり夫と一緒に体をさすってくれる人から
良く言えば姉御肌で冷静なんだけど悪く言えば超冷たくて厳しい人になった。
今思えばそんな差はないと思うんだけど、その時の私には天使と悪魔の差に思えた。
その時に子宮口のチェックをしたんだけど、どうやら全開してるんだけど赤ちゃんが降りてきてないらしく、降りてくるまでまだいきめない(分娩室に行けない)と言われる。
その説明されてる途中で陣痛がきて、ギャーッッと叫ぶ私。
その私にクールな助産師さんがため息まじりに
「叫ばない!呼吸で逃す!」
と叱る。
なんかそれにカチンときて
「出来てりゃ叫んでないわ!」
と私は初めて口答えした。
しかも
促進剤の入った点滴も痛みで暴れるたびに超邪魔で、もう促進しなくていいだろ十分陣痛してるしとか言って点滴取ってくれとも言った。
この時の事を夫は鮮明に記憶してるらしく、「凄くタチの悪い妊婦だと思った。超逆ギレしてるんだもん。助産師さんも呆れてたと思う」と言われる。
本当の陣痛は人格を変える。
というか、自分の奥底にある人格を引き出す。
今あの時の叫びを再現してと言われても出ない。
あんな声出るんだってその時も思ってたし。
とにかく私は叫んで暴れるタイプで
陣痛は肛門がひたすら痛かった。